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34話 王都封鎖の超オオゴト

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-11-19 06:00:44

 非常事態宣言が発令されたことで、発信元の現場には続々と王国軍の兵士が集まってきた。集まってきた兵士はみな完全武装をしており、まるで戦場のような物々しい光景が広がっていた。滅多に起こるようなことではないため、皆が緊張の面持ちで、中にはこの機に武功を上げようとする者もいた。

 王都へ入る門はすべて封鎖された。聞く分には「へぇ〜」で済むかもしれないが、王都全域が完全に封鎖されたのだ。主要な門だけではなく、農民が畑へ向かい帰ってくるような中規模な出入り口も門兵が付き、閉鎖されていた。非常事態宣言のみ知らされているので、これから魔物の大群や敵勢が攻め込んでくるかもしれない、もしくは王都で謀反を起こし逃亡する者がいるかもしれない。そのため、内側と外側に門兵を配置し、見張りも厳重にしなければならなかった。ようするに……超オオゴトになったわけだ。

♢王子、国王を丸め込む

 多少落ち着いたセリオスの腕を掴み、馬から降ろした。レイニーは、エリゼに話したことと同じ内容を小声でセリオスに伝えた。始めはセリオスも拒否の姿勢を見せたが、エリゼが納得した内容だと聞くと、セリオスも最終的には納得してくれた。さらに、これからもレイニーの協力者として一緒にいて欲しいと頼むと、セリオスは驚いたように跪き、深々と頭を下げた。その姿は、まるで忠誠を誓う騎士のようだった。

「こいつらさぁ……子供を拐ってる街の警備兵だから、普通の処刑じゃダメだからね〜許せないっ」

 レイニーは、ぷくーと頬を膨らませて文句を言った。その表情には、子供らしい純粋な怒りが滲み出ていた。

「……それは……ホントですか? こんな奴らが警備兵とは……ラクには死なせませんよ。この様なことが二度と起こらないように、見せしめに致しますのでお任せ下さい!」

 一度は怒りが収まっていたセリオスの目に、再び激しい怒りの炎がともった。その顔は、復讐の念に燃える鬼のようだった。

 さて……これからの問題はっと……両親への言い訳を考えないとなぁ。レイニーは、早くも次の課題へと思考を切り替えていた。あ、エリゼは……? 見渡すと、エリゼは警備兵ではなく、騎士団の兵士に保護されていた。兵士はエリゼの知り合いらしく、何やら事情を話しているようだった。

 レイニーと目が合うと、エリゼは小さな体を揺らしながら駆け寄ってきて、レイニーに抱きついた。レイニーは、再びエリゼの頭を優しく撫でた。すると、エリゼの腕にギュッと力が入り、レイニーの胸に顔を押し付けてきた。

「怖かったよね〜。もう、大丈夫だよ」

 レイニーは、エリゼの背中をそっと叩きながら、安心させるように囁いた。エリゼの温かい体温と、安心しきった様子に、レイニー自身も癒やされるような感覚を覚えた。

「ううん。ぎゅぅってしたかっただけ……♪ えへへっ」

 エリゼは、レイニーの胸に顔を押し付けていた顔を上げて、可愛らしく言った。その笑顔は、まるで花が咲いたように無邪気だった。溺愛している父親がすぐ側にいるのを思い出し、レイニーは振り返ってみた。怒っている表情かと思えば、セリオスは優しい眼差しで微笑んでいた。

 あれ? 俺には良いのか? レイニーは、その寛容さに疑問を抱きつつ、用意された馬車に乗り込んだ。

 帰りの馬車の中で、レイニーはセリオス、そしてエリゼと改めて口裏を合わせることを確認した。

 最初、セリオスは自分のせいにすることを渋っていた。しかし、レイニーが「事実を話してしまえば、すべてセリオスの責任になってしまう」と説明すると、彼の表情は曇った。それを避けたい――そうしないと、自分の心が痛むし、エリゼとも会えなくなる。それだけは嫌だ。 レイニーの訴えに、セリオスは申し訳なさそうにレイニーへ頭を下げた。 エリゼもセリオスの真似をして、小さな声で「ごめんなさい」と謝った。

「エリゼが友達から『友達が拐われた』と聞いたって俺に話をして……それに興味を持った俺が、エリゼとこっそりと抜け出したことにしよ! セリオスは知らなかったことにしといてねっ」

 レイニーは、完璧なシナリオだとばかりに胸を張った。

「えぇ、分かりました」

 セリオスは、渋々といった様子で頷いた。

「でも……お城の警備兵には、お父さんの許可を得たって話したよぉ?」

 エリゼが首を傾げて言ってきた。その言葉に、レイニーは少し焦った。

「それは、俺が勝手に言ったことにすれば問題ないって。俺の護衛兵は……新人っぽいし」

 新人でもベテランでも関係ないよなぁ〜あーちゃんに協力してもらうしぃ〜♪ レイニーは、心の中で悪だくみを始めた。

「え? 私も協力するのですか?」

 あーちゃんの声が、レイニーの頭の中に響いてきた。その声には、どこか不満げな響きが混じっていた。

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